温泉ライター 野添ちかこのお湯の数だけ抱きしめて

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RSS 【第153回】文化財巡りと源泉見学ツアー 〜歴史の宿 金具屋〜 (長野県・渋温泉)

<<   作成日時 : 2015/10/15 19:51   >>

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画像ライトアップされた木造4階建ての建物の前で、記念撮影する観光客の姿もちらほら。「歴史の宿 金具屋」は日本旅館の粋を伝える宿です。

「大正ロマン」「昭和レトロ」を謳う温泉宿は各地にありますが、そのなかでももっとも遊び心がある宿ではないでしょうか。

昭和2年、湯田中まで鉄道が通ったときに、「6代目が、『これからは観光旅館の時代だ! 立派な建物をつくろう!』と宮大工とともに日本中の観光地を巡って、気に入ったものを取り入れてつくった」(若旦那・西山和樹さん)そうで、旅館、神社仏閣や遊郭などさまざまな名建築の要素が取り入れられています。

夕方になると、この宿の定番、「文化財巡り」に参加するため、ぞろぞろと宿泊客がロビーへと集まってきます。この日の参加者は30名超!

文化財巡りといっても宿の外に出る必要はありません。
なぜなら、この宿そのものが「文化財」なのですから。

画像館内を案内するのは、9代目の若旦那、西山和樹さん。

1階から4階まで15メートルもある杉の通し柱、客室は一軒の家のようにつくられています。庇は薄く割った板を葺いた「こけら葺き」で、いまではこのような細工ができる職人さんは非常に数少なくなっているそうです。

宮大工の手による遊び心あふれる細工をひとつひとつ紐解いて解説してくれる若旦那の話に引き込まれ、あっという間に時間が経ってしまいます。

曲線美が美しい
レトロなお風呂
お風呂もとっても艶っぽい、ステキな浴槽ばかりです。
画像
ローマ風の「浪漫風呂」はレトロで女性的な雰囲気。

楕円形の石の浴槽に褐色のにごり湯が注がれています。

写真で撮ると白っぽく写りますが、実際は茶色と緑色の中間くらいの土色をしています。日によって色は異なるようですが、この日は20センチ下はもう見えないくらい濁っていました。どっぷりと湯に浸かると湯船はちょっと深め。身長が高い人でもあごまでの深さがあってリラックス効果満点です。丸い湯船に手を伸ばし、浮遊浴すると本当に気持ちがいい。

温度は40℃くらいに調整されていたでしょうか、入りやすくて15分か20分ほど長湯することができました。こちらの湯は中性のナトリウム・カルシウム‐硫酸塩・塩化物泉。肌がしっとりとする保湿力が高い湯です。

画像真ん中にある噴水のような湯口から源泉が注がれています。昔は足元から湧出していたそうですが、いまは源泉は建物のすぐ横にあり、いったんタンクに溜めて注いでいます。

「かけ流しで、正真正銘本物の温泉なので、体への効果が高く、『膝や腰の痛みがなくなった』『浴後の肌の感じがいい』という人が多いですね。塩素などが入っていないかけ流しだから、効果も高いんでしょうね」と若旦那が薬効の高さを教えてくれました。

浪漫風呂入口の天女のステンドグラスは若旦那の作、ローマ神話の月の神、ディアナを日本風にして、民話『大沼池の大蛇 黒姫物語』をイメージしたデザインとのこと。ここの若旦那は宿のパンフレットから渋温泉のキャラクター「しぶざるくん」のキャラクターグッズまで制作してしまう強者。スゴイ!

ほかにはひょうたん型の「鎌倉風呂」、露天風呂、5つの無料貸切風呂があり、入り比べも楽しいです。

さて、宿の温泉だけでも十分すぎる(むしろ、回れない!)のですが、外湯で有名な渋温泉。共同湯へと出かけなきゃ損! 温泉街の中心地、9湯巡りの結願湯が「大湯」です。宿泊客は宿の鍵を借りて入浴できるほか、日帰り客もここだけは入浴できます。

画像夜20時30分過ぎに行くと、女湯には誰もいませんでした。浴槽は総ヒノキ造りの明るい浴室。湯船は奥があつ湯、手前がぬる湯の2つに仕切られています。大湯の泉質はナトリウム・カルシウム‐硫酸塩・塩化物泉。

渋温泉の共同湯の泉質名は似通っているけれど、浴槽ごとに色や肌触りなどが異なります。ここは黄土色。鉄分が濃くて、舐めるとえぐみのある味がします。とっても個性的。

pH4.5の中性。温度は43〜44℃くらいでしょうか。かなり熱いので、ちょっとだけ水を入れて入りました。途中若い女性客がやってきたけれど、熱すぎて入れないと思ったのか、すぐに、10秒ほどで出ていってしまいました。共同湯がクローズする22時前は混みますが、20時台は穴場でしょうか? うまくいけば独り占めできますよ。

お湯だけでなく、天然蒸し風呂があるのも渋大湯のすごいところ。
温泉ミストに身を浸し、深い呼吸をすれば、全身がスッキリします!

画像建物、お湯がすごいのに、料理も手を抜いていないのが、人気の宿のゆえんでしょう。この宿の料理は奇をてらいすぎず、基本の味がとてもやさしい!
 
胡麻豆腐にのっているのは子持ちこんぶと若竹でプチプチと絶妙なハーモニーです。

八寸は鯉の旨煮や茸の白和え、舞茸の旨煮、紫蘇シメジなど山の幸がいっぱい。舞茸の上にはキュウリを摺ったものがアクセントとしてのっていました。

お刺身は信州サーモン。鍋はりんごで育った信州牛をレトロな牛鍋で。

「凍み豆富の炊き合わせ」はタケノコやサトイモ、絹さやがほっこりやさしいお味に仕上がっていました。

「酢の物」は輪切りのオレンジの上に小なす、白アスパラ、赤パプリカ、なます、こごみがのっていて斬新。お料理の完成度も高く、満足できます。

源泉の底力を体感!
「源泉見学ツアー」へ

画像翌朝8:30〜、参加したいのが、「源泉見学ツアー」。金具屋の持つ4つの源泉をすべて回ります。まず1つ目は「浪漫風呂」に注ぐ鉄分豊富な56℃の源泉。浴槽のすぐ横まで降りて、この浴槽のためだけに貯められている、洞窟のような場所を見学しました。

2つ目は掘削動力揚湯でくみ上げているという、80℃の源泉。「うちはすべての蛇口から源泉が出ます。こんな旅館はないです」と主人が胸を張って説明をしてくれます。500番台の客室の洗面所にここの湯が使われているそう。ナトリウム‐硫酸塩・塩化物泉で、舐めるとしょっぱい! 壁にくっついた塩を舐めて、塩分の多さを実感! 

そして3つ目。掘削自噴で98℃、120リットル湧く硫黄分を含む温泉は100、200、300番台の客室と露天、5つの貸切風呂で使用。ここでは高温泉ならではの湯気を観察。この源泉は冬の客室の暖房の熱源に使ったりするそうです。

最後に4つ目。信玄も入った温泉寺寺湯と本堂の真裏にある荒井河原比良の湯の混合泉で、弱酸性。「成分の濃い温泉はこんなふうに詰まるんです」とパイプの中身を見せてもらいました。30日で詰まるそうで、頻繁な清掃が欠かせません。お客様がちょうどいい湯に入れるようにするための温泉管理には日々の努力があるのですね。

最後に、バケツに入れた硫黄分を含んだ源泉に手を浸し、肌触りを確認しました。
「ほら、ちょっと手をつけただけでつるつるになったでしょう? こうなる湯が美人の湯です」。
うーん。納得。金具屋の主人による美人の湯の条件は@塩化物泉、A弱アルカリ性、Bナトリウムとカルシウムを含有‐‐の3つの条件を満たしたもの。つるつるになったあとカルボン酸ナトリウムに覆われて、乾燥肌にはもってこいなのだとか。

こんな話を聞くと、湯の効用が身近に感じられて、また行きたくなります。実際「次もまた行こう」という声が聞こえてきました。

建物の素晴らしさ、湯の質の良さも、宿の主人や若旦那が自らアピールすれば、伝わり方も違いますね。

歴史の宿 金具屋

長野県下高井郡山ノ内町平穏2202
●全29室
●1泊2食16,000円(消費税・入湯税別)〜
●IN 15時/OUT 10時
●日帰り入浴 不可

※掲載情報は変更になる場合もございます。
ご予約の際には、必ず内容をご確認ください。


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